Q: 「本を読む」や「ご飯を食べます」を「ホンノヨム」「ゴハンノタベマス」
のようにやってしまう学習者がいます。原因と対策を教えて下さい。
A:
よくあることですね。
■『ン』(撥音/はねる音)のいろいろ
「本を読む」を「ホンノヨム」または「ホノヨム」のように発音するのは、「本」
の「ン」(撥音/はねる音)を適切に発音していないためです。
日本語の「ン」(音素 /N/ )には幾つかの発音上の違い(異音)がありますが、
これをちゃんと理解している必要があります。
主なものを以下に記します。
1)「散歩(さんぽ)」「本部(ほんぶ)」「運命(うんめい)」などの「ん」
→ [ m ](両唇鼻音)
* あとに、[
p, b, m ] (両唇音)が来るとき
2)「見当(けんとう)」「電池(でんち)」「半月(はんつき)」
「現代(げんだい)」「漢字(かんじ)」「案内(あんない)」などの「ン」
→ [ n ](歯茎鼻音)
*あとに、歯または歯茎音
[ t, d, ts, , dz,
, n, r ] が来るとき
3)「こんにゃく」「はんにゃ」などの「ン」→
「ニャ」の子音と同じになる
(硬口蓋鼻音)
4)「観光(かんこう)」「言語(げんご)」「日本(にほん)が」など
の「ン」→ [ ] (軟口蓋鼻音)
*あとに、[ k, g ] が来るとき
5) 「ペン」「本(ほん)」などの語末(単独に発音された時)および文末の「ン」
→ [ N ]
(口蓋垂鼻音:口蓋垂と奥舌を軽く接触させ、声を鼻に抜く)
*この[ N ] のある言語は非常に限られている
6)「恋愛(れんあい)」「原因(げんいん)」「電話(でんわ)」などの「ン」で、
その次に母音・半母音が来る
→ 多くの場合、後続母音・半母音の鼻母音となる
さて、上記の (5) と(6)
の「ン」がネイティブでない日本語話者の場合、(4)
または
(2) で行われることがあり、母語の影響等により(2)
が用いられる時、「本を」→
「ホンノ」・「ホノ」、「恋愛」→
「レンナイ」・「レナイ」のようになるわけ
です。
この場合は、「ン」が一拍を形成するものであることを意識させ、発音する時の
舌の位置を歯または歯茎にではなく、下顎につけたまま後続の母音を発音するよう
に試みさせるとうまくいくようです。また、両手で舌・歯・歯茎・口蓋を形作って
舌の位置と動きを説明するとか、口と舌の両方が動かせるパペット(私の場合は
狼のダグラスくん)で説明するとか、あるいは音声器官の図を用いる等の方法も
有効です。両唇音の[ m ]であれば、教師の唇の動きを見てもらうのがよいでしょう。
98.06.10 NAKAMURA |